薄板加工は薄い金属や非金属を成形する加工のことで、一般的に1〜3mm以下の板材を薄板と呼びます。ただし、薄さに関して明確な定義はありません。薄板にはいくつかの種類があり、それぞれ用途があります。
熱延薄板類は、熱間圧延によって加工された3mm以下の切り板・帯銅・広幅帯板などのことを指します。自動車や建築、産業機械などさまざまな分野で使われる他、この後紹介する冷延鋼板類や電磁鋼板などの原板となる薄板です。熱間圧延は金属の再結晶温度よりも高い温度で金属を柔らかくして金属ロールで加工するため、加工性が高いのがメリットです。ただし、加工温度によって膨張してしまうため、寸法の精度が高くないというデメリットがあります。熱加工のための設備やランニングコストも必要です。
冷間圧延された切り板、冷延広幅帯鋼、みがき帯鋼などが冷延鋼板類です。熱延薄板類を原板とし、金属ロールで圧をかけて伸ばします。加熱の必要がないため加熱設備が不要で、操作性が高いのがメリットです。また、加工時の熱による膨張が起きないため、精度の高い加工ができます。加工時に表面に酸化膜ができないため、なめらかな薄板に仕上がります。自動車や電気機器、鋼製の家具などに使用される薄板です。
熱間圧延後に冷間圧延された加工物を熱処理で加工してできた薄板が電磁鋼板です。軟鋼に約3%のケイ素を含有しており、通電時にすると効率的に磁気エネルギーに変換できます。磁気特性と優れた電導性があるため、大型発電機・変圧器・家電のモーターなどに使用されることが多いです。
薄板加工は、さまざまな金属加工の中でも難しいと言われることが多い加工方法です。薄板加工が難しいと言われる理由を見ていきましょう。
薄板は1〜3mmと非常に薄いので、強度が低く、繊細な素材です。そのため、一般的な板金加工用の機械では、加工ができません。薄板加工のためには専用の機械が必要で、加工方法に応じて金型も必要になります。また、加工後の薄板は精度が高く、複雑な形状のものがほとんどですから、検査用の機械や道具も使用できるものが限定されています。
加工された素材が加工時にかかった圧力から解放され、形状が少し戻ってしまうことをスプリングバックといいます。薄板はこのスプリングバックが多く発生してしまうため、必要な角度での加工が難しい部材です。精度の高い薄板加工をするためには、スプリングバックを考慮した金型設計が必要になります。薄板の曲げ加工非対応となっているメーカーが多いことも、薄板加工が難しいと言われる要因の一つです。
薄板は自動車や建築、電気機器のほか、医療機器などにも用いられます。医療機器は特に精度である必要がありますから、薄板も高精度が求められることが多いです。精度の高い薄板に加工するためには、薄板の実測値やロール方向なども考慮して加工しなければなりません。ノウハウを熟知している作業員が必要な上、高精度の加工が実現できる設備を有している必要があるため、薄板加工は難しいと言われています。
薄板加工にはさまざまな種類があります。代表的な種類を見ていきましょう。
プレス加工の一種である曲げ加工は、被加工物に力を加え、金型に合わせた形に加工する方法です。先ほど解説したスプリングバックが起きやすい加工方法のため、薄板の曲げ加工を行う場合は、スプリングバックを考慮した金型を作る必要があります。
薄板の曲げ加工はスプリングバックの影響で正確な角度への形成が難しいため、専用の治具が必要となることも多いです。そのため、他の加工方法よりコストがかかってしまう傾向にあります。
被加工物に熱や圧を加え、薄板同士を接合することを薄板の溶接加工といいます。薄板は強度が低く繊細で熱によって歪みを生じてしまうため、溶接加工が難しい部材です。薄板を溶接加工する際には、TIG溶接・MAG溶接・スポット溶接などが行われます。
また、近年は熱変形が起こりにくいレーザー溶接が行われることが多いです。レーザー出力を最適に設定すれば、溶接強度を維持しつつ、TIG溶接で加工が難しい薄板にも対応できます。
薄板を切断したり、穴を開けたりする加工のことを薄板のブランク加工といい、別名「抜き加工」とも呼ばれます。ブランク加工はほとんどの部品で必要となる工程です。
タレットパンチプレスやレーザー加工機、シャーリングなどを用いて、必要な形に加工されます。レーザー加工機を使用する場合、熱の影響が出にくいファイバーレーザー加工機が使われることも多いです。CO2レーザー加工機も用いられますが、熱の影響で歪む可能性があるので注意しなければなりません。
カシメ加工は塑性変形を活かして、複数の部材を接合させる加工方法です。溶接加工ができない部材に適しており、薄板にも多く用いられます。接合する部材に開けた穴にハトメやリベットを通して接合する方法と、接合する部材自体を変形させて接合する方法があります。
※選定基準…Googleにて「エッチング加工」と検索した際に表示されるエッチング加工会社27社の中から、ISO9001を取得している国内生産会社をそれぞれ以下の基準で選出しています(2022年2月3日調査時点)。
・まず相談するべきエッチング加工会社…1個から制作可能で、図面の設計~複合加工まで対応している会社
・大量生産対応のエッチング加工会社…大量生産可能で生産拠点が最も多い会社(5拠点)
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