エッチングは金属を腐食し、溶かすことでさまざまな加工を行う技術です。加工をほどこしたくない部分にマスキングを行う素材を「レジスト」と呼びます。いったいどのように使われているのか、その特徴や分類を紹介します。
「レジスト」を直訳すると「抵抗する」や「処理に耐える」という意味合いになります。
レジストとはエッチング加工などをほどこしたくない部分を保護する目的で塗布される皮膜を指します。
インクのように塗ることから「レジストインキ」とも呼ばれます。
レジストにはいくつかの種類があり、その分類方法も主に2つに分かれています。
まず1つが保護膜形成プロセスによって分類される場合です。
レジストをほどこすためにはレジスントインキを金属などに塗布しなければなりません。しかし、手作業によって刷毛などで塗っていては時間がかかり、正確さにも欠けてしまいます。そこで「フォトレジスト」や「スクリーン印刷レジスト」を用いた加工が行われているのです。
次に、もう1つが保護膜の使用目的による分類です。ここでは「エッチングレジスト」・「めっきレジスト」・「ソルダーレジスト」を取り上げ、それぞれのタイプについて掘り下げていきます。
「フォトレジスト」は写真フィルムのように、光が当たることで化学変化を起こす「感光」の作用を利用したレジストを指します。
ただし、同じフォトレジストであっても、光によってインキが溶けるポジタイプと、光によってインキが固まるネガタイプが存在します。
インキを金属などの素材表面に塗布し、そこに「フォトマスク」というフィルムをかぶせて光を当てます。するとマスクで保護されていない部分が感光するという仕組みです。
写真のように光を利用することから、フォトレジストは微細なパターンにも対応することができます。
「スクリーン印刷レジスト」は孔版印刷の原理を利用したレジストです。
孔版とはシルクスクリーンなどに代表される印刷方法です。
パターンをかたどった薄くしなやかなメッシュ状の布などに、「スキージ」と呼ばれる板状のものでインクを広げていきます。
広い処理面積に対応でき、重ね塗りなどの加工をしやすいのも特徴です。ただし、微細なパターンにはあまり向いていません。
「エッチングレジスト」はエッチング加工の際に用いられるレジストです。金属に対しエッチング(腐食)を行う際、ほかの部分を保護するためにレジストインキが塗布されます。
エッチングレジストの場合は、基本的に加工が終わったあとにはその役目を終えてレジストインキが落とされます。その際はレジストインキだけを落とす液が吹きかけられるため、加工に用いられている金属が溶けることはありません。
エッチングレジストの場合のインキには、アルカリで落とせるものと、有機溶剤で落とせるものがあります。
「めっきレジスト」は、めっきをほどこす際に加工されたくない部分へとレジストインキを塗布するものです。「めっき皮膜」とも呼ばれ、レジストインキが皮膜を形成することで金属が保護されます。
エッチングレジストと同様に加工が終わったあとにはアルカリや有機溶剤でレジストインキが落とされます。
また、レジストインキの中にはこのめっきとエッチングの両方に対応しているものもあり、兼用して使われている製品も販売されています。
「ソルダーレジスト」と聞くと耳慣れない言葉かもしれませんが、実は大半の人がこのレジストを目にしています。
パソコンの中を開けたとき、プリント基板と呼ばれる電子回路の土台板がむき出しになりますが、その基板の緑色樹脂が全てソルダーレジストとなっています。そもそもソルダーレジストの「ソルダー」が電子回路に欠かせない「はんだ」を意味しています。
ソルダーレジストはエッチングレジストやめっきレジストとは異なり、製品化されたあとも溶液などで落とされることはありません。
プリント基板の表面をソルダーレジストで覆うことで回路を保護し、絶縁膜を形成するという機能を持っています。
レジストとは何か、どんな使われ方をされているのか、そして保護膜形成方式や使用目的による分類についても理解いただけたのではないでしょうか。
一般的にはあまり認識されていませんが、レジストは精密なエッチング加工やめっき加工に欠かせない技術です。
特にプリント基板においては、レジスト技術が電子回路の飛躍的な発展に一役買ったと言っても過言ではありません。
今後も新たなレジスト技術によって産業に革新がもたらされることがあるかもしれません。
※選定基準…Googleにて「エッチング加工」と検索した際に表示されるエッチング加工会社27社の中から、ISO9001を取得している国内生産会社をそれぞれ以下の基準で選出しています(2022年2月3日調査時点)。
・まず相談するべきエッチング加工会社…1個から制作可能で、図面の設計~複合加工まで対応している会社
・大量生産対応のエッチング加工会社…大量生産可能で生産拠点が最も多い会社(5拠点)
・特殊素材対応のエッチング加工会社…最も対応している素材の種類数が多い会社(21種類)