超精密加工には、切削とエッチングの選択肢があります。どちらが適しているかは加工の内容次第です。
このページでは超精密加工における切削とエッチングの使い分けについて、超精密加工と超精密エッチング加工を比較しながら、それぞれの特徴を紹介します。超精密加工と超精密エッチング加工それぞれに興味のある方はぜひご覧下さい。
超精密加工領域の状態や特徴、コスト・納期を紹介します。
超精密エッチング加工との違いを把握するためには、超精密加工領域を把握することが大切です。似た言葉を持つ両者ですが、特徴は異なります。
超精密加工の最大の特徴はその驚異的な精度と再現性です。この技術を用いることで、数ミクロン(1ミクロンは1/1000ミリメートル)以下という微細な寸法精度で部品を製造することができるようになります。
これは、人間の髪の毛の直径(約50~100ミクロン)の約1/10~1/20に相当します。また、表面粗さもナノメートルレベル(1ナノメートルは1/1000ミクロン)で制御することが可能です。
これらの精度を実現するためには、切削やエッチングといった異なる加工手法を適切に使い分けることが重要です。切削は大きな形状を創り出すのに適しており、エッチングは微細なディテールを作り出すのに適しています。
これらの手法を組み合わせることで、高度な機能を持つ製品を作り出すことができます。例えば、半導体デバイスや精密機器の部品など、微細な寸法精度と表面粗さが求められる製品の製造にこの技術は欠かせません。これらの製品は、我々の日常生活や産業活動を支える重要な役割を果たしています。
また、日本は世界的に半導体産業への取り組みに後れを取っていたことから、巻き返しを図るべく官民一体となって半導体事業に取り組んでいます。
超精密加工は、特定の工具を使用して行われます。これらの工具は、大型機器に比べてコストが低いため、初期投資(イニシャルコスト)を抑えることができます。しかし、超精密加工は一部品ごとに時間がかかるため、大量生産には向いていません。
そのため、大量に加工する必要がある場合、一部品あたりのコストが高くなる傾向があります。これは、加工時間が長くなると、それだけ工具の使用時間も長くなり、工具の摩耗や交換によるコストが増えるためです。
また、加工時間が長いということは、その間に他の作業ができないという点も考慮する必要があるでしょう。これらの要素が合わさることで、加工数が増えるとコストが高くなる傾向にあります。
超精密加工の納期は、製品の複雑さや加工面積に大きく依存します。試作加工や小ロットの場合、短納期での製作が可能です。これは、加工範囲が狭く、部品の数が少ないため、加工時間が短くなるからです。
一方、複雑な形状の加工や、シンプルな加工でも加工面積が広い場合は、納品までに時間がかかることがあります。これは、加工範囲が広くなると、それだけ加工時間も長くなるためです。
また、超精密加工は手作業による加工が主であるため、大量生産の場合、時間がかかる傾向にあります。大量生産では、加工する部品の数が多くなると、それだけ加工時間も増え、結果的に納期が延びることがあります。
超精密エッチング加工は、化学薬品を使用してワークの一部を溶かし、任意の形状を得る加工手法です。主に電子・半導体分野で利用され、半導体産業の進展と共に注目を集めています。超精密エッチング加工の特徴である、形状の精度や加工コスト、納期について解説します。
超精密エッチング加工は微細な加工で、特筆すべき点は自在な形状作成能力です。半導体ウェハーはもちろん、光デバイスやMEMS(マイクロエレクトロメカニカルシステム)などの微細な構造の作製にも適しています。ナノオーダーの加工も可能であり、微細なパターンの形成が得意です。ただし、化学薬品を用いて物質を「溶かす」ため、シャープなエッジを形成するのは難しいです。一方、後述しますが大量生産に向いており、切削加工にはない利点があります。
超精密エッチング加工は、初期段階でフォトマスクの制作が必要となります。このフォトマスクの制作には一定の費用が発生しますが、一度制作されたフォトマスクは繰り返し使用可能なため、その後の加工コストは大幅に抑えられます。したがって、ランニングコストは比較的低く抑えられます。
この特性から、超精密エッチング加工は大量生産に適しています。一方、切削加工は各製品を個別に加工するための道具が必要となりますが、超精密エッチング加工ではフォトマスクを用いて一度に多数の製品を製造することができます。これが、超精密エッチング加工と切削加工の主な違いとなります。
超精密エッチング加工の納期は、加工の種類と量によります。初回の依頼では、フォトマスクの製作やその他の工程が含まれるため、時間がかかることが予想されます。
しかし、リピートオーダーの場合、既にフォトマスクが存在するため、加工作業に直接進むことができ、納期は大幅に短縮されます。
また、超精密エッチング加工は大量生産に適しており、一括での大量生産でも少量生産でも、納期は大きく変わらないことが特徴です。これらの要素を適切に活用することで、生産効率を最大化することができます。
ここでは得意領域や溝・穴・角穴の加工やコストについて、比較したものを表で紹介します。同じ項目の比較を確認することで、より分かりやすく両者の違いを把握できるでしょう。
超精密切削加工 | 超精密エッチング加工 | |
得意領域 |
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溝 |
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穴 |
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角穴 |
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コスト |
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超精密切削加工と超精密エッチング加工それぞれの特徴や比較を紹介しました。それぞれの特徴が異なると分かっていただけたのではないでしょうか。
「適材適所」との言葉があるように、切削とエッチングにもそれぞれ強みがあります。特徴・強みを把握し、使い分けることでより効果的な加工ができます。
※選定基準…Googleにて「エッチング加工」と検索した際に表示されるエッチング加工会社27社の中から、ISO9001を取得している国内生産会社をそれぞれ以下の基準で選出しています(2022年2月3日調査時点)。
・まず相談するべきエッチング加工会社…1個から制作可能で、図面の設計~複合加工まで対応している会社
・大量生産対応のエッチング加工会社…大量生産可能で生産拠点が最も多い会社(5拠点)
・特殊素材対応のエッチング加工会社…最も対応している素材の種類数が多い会社(21種類)