窒化(nitriding)の処理方法 について

鋼材の表面を硬化させる方法として「窒化」と呼ばれる方法があります。こちらの記事では、その窒化について紹介します。どのような方法があるのか、またそれぞれの方法における特徴やメリット・デメリットなどについてまとめていますので、窒化について知りたいと考えている方はぜひ参考にしてください。

窒化(nitriding)の処理方法

「窒化」とは、鋼の表面に窒素化合物の層を作り、表面を硬化させる処理のことを指しています。窒化を行った鋼の表面は硬くなるとともに、耐食性にも優れた性質を持つようになります。さらに、表面付近には圧力残留応力が発生していることから、疲労強度も高くなっている点に加え、焼き入れと比較した場合には窒化は処理温度が低く寸法変化がほとんどない点もポイントのひとつといえるでしょう。

例えば、窒化はエンジンのシリンダーや加工機器の軸受、ダイカスト機械などさまざまなものに適用されていますが、窒素化合物層は0.1mm程度と非常に薄いため、衝撃を受ける用途には使用できないといった面もあります。また、窒素化合物の層が表面付近のみとなっていることから、窒化後の加工は難しいとされています。

以下で窒化の具体的な方法について解説していきます。

ガス窒化(Gas nitriding)

アンモニアガス中に鋼を入れ、500℃ほどで加熱を行って数十時間かけて窒素を浸漬させる方法を「ガス窒化」と呼びます。この時、アンモニアガスと窒化用に調整した窒化用鋼が必要となる点はガス窒化の特徴のひとつといえるでしょう。

この時、アンモニアは鋼の表面で水素と窒素に分解されます。その後活性窒素が鋼表面に浸漬していきますが、この活性窒素が鋼内部のアルミニウムやクロムなどと反応することによって強度の高さを生み出します。 ガス窒化は処理時間が非常に長くかかるといった面もありますが、時間が長い分窒化層が厚くなるために強度面で優れる、というメリットが得られます。

軟窒化(Soft nitriding)

窒素と同時に炭素を拡散浸透させる処理を「軟窒化」と呼びます。この方法を使用すると、窒化処理よりも表面は柔らかくなるものの金属疲労には強くなることから、折れにくくなるという特徴があります。

軟窒化を行う場合には、シアン化カリウム・シアン化カリウム・炭酸ナトリウムを安定剤とする溶融シアン塩浴を用います。チタンライニングを施した容器を使用し、およそ570℃で1.5時間処理を行っていきます。その後、およそ300℃で1時間の焼きなましを行います。

この方法では、前述の通り窒化処理としては表面が柔らかいことから軟窒化と呼ばれています。ただし、シアン化化合物を使用するなどの理由から実施する際に注意が必要な方法であるため、利用される数は減少傾向にあります。

イオン窒化(Ion nitriding)

窒素イオンが持っているエネルギーを利用して窒化を行う方法を「イオン窒化」と呼びます。この方法は、無公害の窒化方法であるという大きなメリットがあります。

例えばガス窒化は非常に長い時間がかかるために経済的な面からデメリットがある点、また軟窒化の場合はシアン化合物などを使用することから細心の注意を払う必要があります。しかし、イオン窒化の場合にはグロー放電によってイオンかした窒素を鋼に衝突させることによって、FeNと呼ばれる窒化物の生成と吸着が鋼の表面で発生して窒化物層を形成することができます。

前述の通り無公害であるという点に加えて、ガス窒化と比べると時間がかからない、また酸化物の発生が防止できるといったメリットがある反面、窒化を行う製品の形状などによって窒化層が均一にならないケースがある、という点がデメリットとして考えられます。

ガス軟窒化(Gas soft nitriding)

炉内をアンモニアと雰囲気ガスで満たした中に鋼を入れ、窒素と炭素を浸透させることによって鋼の表面に高い硬度の化合物層を作る方法を「ガス軟窒化」と呼びます。

他の熱処理を行う方法と比較した場合、500〜580℃程度の温度域での処理を行うといったように比較的低温での処理となりますので寸法変化や歪みが少なく済みます。さらに、ガス軟窒化を行った場合には表面に酸化膜が形成しにくいために見た目がきれいであること、またほとんどの鋼の種類に対して窒化が行える方法である点が特徴といえるでしょう。

こちらの方法はガス窒化と名前が似ていますが、ガス窒化よりも大幅に処理時間が短い点もポイントとなっています。

それぞれの窒化方法の特徴を押さえておくことが大切

こちらの記事では、窒化の方法を紹介してきました。鋼材の表面を硬化させることによって、耐摩耗性などに優れた材料にするための方法であり、さまざまなところで使用されています。「窒化」といっても多彩な方法がありますので、まずはそれぞれの違いやメリット・デメリットについて知るところから始めるのがおすすめです。

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