こちらの記事では、浸炭の処理方法について紹介しています。特に「固体浸炭」「ガス浸炭」「液体浸炭」という3種類の方法について取り上げ、それぞれの方法の特徴などをまとめていますので、浸炭について知りたいと考えている方はぜひ参考にしてください。
「浸炭」とは、金属加工において表面層の硬化を目的として炭素を添加する処理のことを指します。浸炭を行うことによって、その材料の表面は硬く、内部は粘り強くなるというメリットが得られます。主に耐摩耗性を向上するために行われる加工です。
この浸炭にはさまざまな方法がありますが、ここでは「固体浸炭」「ガス浸炭」「液体浸炭」という3種類の方法について解説していきます。それぞれの特徴について見ていきましょう。
木炭を炭素源とする「固体浸炭」は、さまざまな浸炭のやり方の中でも簡単とされている方法です。処理を行う際には、浸炭をしたい部品や製品と木炭を主成分とする浸炭材を、耐熱鋼製の浸炭箱に入れて密閉します。その後、炉中で箱を850〜950℃で数時間加熱してから冷却を行い、部品や製品を取り出すという流れになります。この時、高温に加熱された木炭は密閉した箱の中にある酸素と反応して二酸化炭素となり、その二酸化炭素が木炭と反応して一酸化炭素になります。この一酸化炭素が鋼材の表面で分解して炭素が生じ、鋼材の表面に浸透拡散する、という仕組みです。
この時に部品や製品に浸炭させたくない部分がある場合には、あらかじめ銅でめっきを施しておきます。これは銅が炭素の固溶限(固溶体として他の元素が入り込める限界の量)が低いことから炭素が固溶しにくい、という性質を利用しています。
「ガス浸炭」は、炭化水素系ガスを主成分とした高温のガスを用いる方法です。この方法の特徴は、無公害であるとともに経済的であるということです。材料を容易に調達できる、という点から非常に広く用いられています。
鋼を大気中で加熱した場合、通常は表面が酸化することに伴って炭素は酸素と反応して脱炭されますが、ガス浸炭の場合には炉内の雰囲気制御を行うことで炭素を鋼中に拡散させられます。このガス浸炭の場合、上記で紹介している固体浸炭と比較すると加熱時間が短く済み、制御も容易であるため浸炭が均一に行えるといったメリットがあります。さらに、ガス組成を変えて表面の炭素濃度を調節できる点に加えて、浸炭・脱炭を防止して表面を酸化させないといった状態にすることも可能であるため、浸炭を行った後に光輝加熱からの焼き入れを行うこともできます。この点を利用して、浸炭させた鋼を光輝状態に加熱して焼入れを行う「浸炭焼入れ」を行えます。浸炭焼入れは、浸炭による表面硬化とともに焼入れを行うことで耐摩耗性を向上させるという点を目的として行われています。
鉄製の容器にシアン化合物を主な成分として塩化ナトリウムを加えた浸炭材を入れ、加熱溶融させた塩浴(溶融シアン化ナトリウム)に鋼を含浸させるという方法が「液体浸炭」と呼ばれる方法です。
この処理を行う場合、シアン化合物が大気中の酸素と反応することによって一酸化炭素と窒素を発生させるため、液体浸炭を行う際には炭素と窒素を同時に浸透させられる点が特徴です。この特徴から、液体浸炭は「浸炭窒化法」とも呼ばれています。
液体浸炭の場合、処理温度が低く歪みが少ないことに加え、処理時間が短く均一に処理が行えるといったメリットがある反面、シアン化ナトリウムが猛毒のシアン化水素を発生させるといった面もあるため、処理を行う際には十分に注意が必要です。
こちらのページでは、3種類の浸炭の方法についてご紹介してきました。浸炭は、主に重機や機械部品のギアといったように高い負荷がかかる部品に対し、耐摩耗性を向上させるという目的で用いられるものです。それぞれの方法の特徴やメリット・デメリットなどをしっかりと理解しておきましょう。
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